黒木華サンが 「真田丸」 で死んでから早くも復活(笑)。 柔道に挫折した、「新人熱血マンガ編集者」 を演じます。
ただ 「新人」 と 「熱血」 には最初ハテナマークがつきました。 黒木華サンは 「新人」 っていうイメージじゃないし、「熱血」 とはいちばん遠いところにいる女優、という感覚なので、就活を何度も失敗するうち、面接のなんたるかを柔道に例えて過剰な元気でポジティヴに達観していく様子は、「すごい無理してないか?」 という感じで序盤は見ておったわけです。
その彼女、清掃員に変装していた就職希望出版社の社長、高田純次サンを投げ飛ばしてしまい、本人も周囲も 「も~これは絶対この会社落ちた」 と嘆くのですが、見ている側は 「も~これで絶対この会社受かった」 と思う(笑)。 「ありがちな合格パターンだよな」 みたいな。
そしていきなり編集部に配属。 面接のときから黒木サンは 「柔道を始めたきっかけが柔道マンガだったんです!」 と過剰にはきはきと答えていたから(笑)マンガ雑誌の編集部なのだろうと思ってたらやはりそうで(スイマセン、ちっとも前情報がなくて見てるもんで)、週刊青年コミック誌で業界2位の雑誌らしい。
そこ、「週刊青年コミック誌の販売数で1位のところには1回も勝ったことがない万年2位」、というから、「あ~これは、ヤングジャンプに勝てたことがないモーニングがモデルか」 と思ったんですが(笑)、どうもこのドラマの原作は案の定マンガで、その原作は 「月刊スピリッツ」 に連載中らしい。
じゃモデルは週刊ビッグコミックスピリッツか(笑)。
いや、だって、青年コミック誌業界では、スピリッツってモーニングどころかアフタヌーンとかアクションとかと同程度の販売数なのではなかろうか、まあいいけど(笑)。
それにしても、その配属された編集部のメンツがすごい。
編集長が松重豊サンでデスクがオダギリジョーサン。
ほかに安田顕サンと荒川良々サン。
この編集部の様子を見ているだけで妙な安心感があり、「今までの役柄とはまったくイメージが違う黒木華サン」 の違和感を、覆い隠していくのです。
そしてドラマはまるで去年の 「表参道高校合唱部」 を彷彿とさせるような清涼感を残しながら進行していくのですが、さわやかなドラマとは裏腹に、私は結構つまんないことを考えているというか(笑)。
つまり、「このドラマの出版社の人たちって、出版不況をどのように捉えておるのだろう」、ということです(ハハ)。
まず紙の媒体というのがこの先どうあがいても先細りになっていく、そして購買層が否応なく高齢化していく。 読者でいちばんターゲットにされるべき若者の数が、劇的に減少していく。
取次会社は次々と倒産していく。 街の本屋さんもごっそり減っている。
それに対して出版社というのはデジタル化という戦略を取っているのですが、将来に対する戦略が先鋭化していくのに対して、マンガの現場というのはいつまでたってもインクとペンが基本。 ことにマンガというのは、デジタル対応にあまり適していないメディアなのではないか、と私などは思うのです。
で、ここから持論を展開したいのですが(実はいったん展開してスゲー長いレビューになってしまった…笑)それは全部割愛して(スゲー削除した…スゲー無駄な時間だった…笑)、ドラマはそういうことには無頓着に(笑)、昔からよくある 「マンガ家と編集者」 の内幕を見せる、業界ドラマに終始します。
マンガ業界ドラマのもっとも基本的な約束事は、「ネーム」の意味を見る側に叩きこませること(笑)。
つまり下書き、設計図のことなんですが、ドラマは実に分かりやすくそれを説明していきます。 これって注意深く見てみると、じっさいのマンガ家たちの現物を拝借しているように見える。 やはりスピリッツのお膝元である小学館の根回しによるものであろう(笑)。
そしてほとんどのマンガ家の運営方式である、「アシスタント制」。 極端な例になると、マンガ家はもう、登場人物(人とは限らんが)の 「顔」 だけ描いてあとはアシスタントに丸投げ、という方法を取っていたりする。
今回俎上に上がったベテランマンガ家の小日向文世サンはその点、全身まできちんと描いていたのですが、姿勢の変化が災いして長年の間にデッサンの狂いが生じていった、というタネを仕込んでいました。 なおここで展開する小日向サンの絵は、「パトレイバー」 などのマンガで知られるゆうきまさみサンが担当したらしい。 これも 「小学館のチカラ」 であろう(笑)。
しかしこのー、デッサンの狂ってるベテランって、「○ャプテン翼」 のマンガ家さんのことかな~(爆)。 20頭身くらいあるもんな最近(笑)。 アレってライバル誌だし。 あっ、ちょっとシャレになってませんか?(笑)
…それはいいとして(笑)。
この小日向サン、悪意のあるネットの書き込みを見てしまって引退を決意しちゃうんだけど、今回の小日向サンくらい長年人気トップクラスでやってると、正直もう、お金は稼げるたげ稼いじゃってる気はするんですね。
でも描くのをやめないマンガ家は、なにをモチベーションにして続けていられるのか。
今回の小日向サンは、読者に 「やさしさこそ本当の強さである」 ことを伝えたくて、マンガを描き続けてきた。 でもそれがちっとも伝わっていなかったことを知って、引退しようと決意した(まあドラマの常として、最後は翻意するんですが)。
これって分かり過ぎるくらい分かるなあ。 しがないブロガーも、同じモチベーションですんで(笑)。 でもブログじゃメシが食えないのにやってるのが健気なとこなんですが(笑)。
とりあえずその問題を、黒木華サンは電車道のように、あっ、これは相撲か、横四方固めのように(よく分からん…笑)強引で過剰な元気で、解決していくのです。
「これって黒木華のイメージじゃない…」 と思っていた当初の危惧は、いつの間にか、それまで埋もれていた 「黒木華の持つ安産型のイメージ」 とダブっていくようになります。
「真田丸」 のお梅でもそうだったのだけれど、黒木華サンにはどことなく、「大地に根を下ろしたような堅実なイメージ」、というのも、同時にあるんですよ。 要するに農民型。 腰が重たい。 今回のドラマのなかでも、「重心がブレない」 みたいな周囲の評価があったけれど、まさしくそれ。
黒木サンは、一見こうした安定性のある役柄に、油断ならない暗黒面を忍ばせることも得意としているのですが、今回はあくまで爽快系。 今回の黒木華には、裏がない。 そういう安心が、ドラマの爽やかさを、余計に演出していくのです。 この展開はちょっと意外だった。
今後は編集だけでなく営業部とか、書店とかを巻き込んだ複合的な出版のあり方にまでフィールドを広げていく可能性も期待できます。 ただ、あまり小難しいドラマではなく、見たあとスッキリ爽快、という方向なのではないか、と感じる。 ドラマを見てモヤモヤをスッキリさせたい人にはオススメか、と存じます。
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「重版出来(じゅうはんしゅったい)!」 第1回 黒木華の 「腰の重さ」
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