「暮しの手帖」 の創始者である大橋鎭子サンをモデルにした、今回の朝ドラ。 ウィキで調べたら、ちょうど3年前にお亡くなりになっているらしい。 享年93歳だから、もうじゅうぶん生きたのかもしれなかったけれど、ご自分がモデルの朝ドラなんて、長生きした最大のご褒美になったでしょうに、残念なことですね。
肝心の本編ですが、まず 「暮しの手帖」 は大人の事情で(笑)「あなたの暮し」 に改題。
脚本は西田征史サンで、過去に何を書いてるのかなと調べたら、「怪物クン」 とか 「妖怪人間ベム」 とか、ETVの 「シャキーン!」 とか。 一瞥した印象では、あまりキャリアがないような感じがするんですが。 朝ドラが書けるような体力あんのかな? 元芸人らしいし(あっ、芸人をバカにしてる…笑)。 バカリズムサンみたいな 「知性派」 なのかな?
ナレーションは壇ふみサン。 去年の 「花燃ゆ」 では方向性の定まらないドラマのなかでひとり、ごく普通の平凡な母の、寂寞たる老境を演じて印象的でした。 その、「ごく平凡」 というカラーが今回も出ている感じで、とても心地よいナレーションになっています。
ただこれってナレーションのせいじゃないけど、冒頭の染色がどーだの織物工場がどーだのという、主人公の父親が働く環境についての説明は、まったく頭に入らなかった(笑)。
こういう言葉を矢継ぎ早に言われても困惑するですよ。 狙ってやってんのかもしれないけど。 元芸人だから(あっ、元芸人をバカにしてる…笑)。
主題歌は宇多田ヒカルサン。 この人は若い時にじゅうぶん稼いでしまったために現在隠居状態なのですが(違うか?)、たまーにエヴァンゲリオンとか気が向いたら仕事してる感じで(笑)、その 「たまー」 が今回(笑)。
その主題歌、若いときのR&B、ヒップポップの名残りは微塵もなく、実に 「朝ドラ向き」 の 「いい曲」 に仕上がっています。 才能あるのにもったいない気がするのですが、まあ 「ハンターハンター」 の富樫サンみたいのもいるし(笑)。
お金を稼ぎまくっても貪欲に仕事を続けるポール・マッカートニーみたいな人を見てるから、私もつい皮肉を言いたくなっちまうんでしょうね。 まあ、人生なんか、3億円くらいあれば大概生きていけるし。 私なんか老い先短いから、4、5千万でも生きられそ~な気がする(笑)。
なんの話だ(笑)。
そして第1回目を見た感想。
昭和33年、主人公の高畑充希サンが編集室で、執筆を断られたという報告を聞いて 「どうしたもんじゃろのお~」 と流行語大賞狙ってるセリフを言うのはまあ大目に見まして(「びっくりぽん」 とかどうも最近の朝ドラは 「じぇじぇじぇ」 の呪いにかかっておる…笑)。
「電話じゃダメ!会って話しなきゃ!」 というのには賛成でしたが、この先 「あなたの暮し」 を立ち上げていく途上で、こういうビジネスルールを披露してくれるとなると、期待が大です。 家族の愛情の話になっちまうと、「まあ見るけど、『あさが来た』 でさんざん見たしなァ」 という気分になりそう。
そして次のシーンであっという間に主人公の少女時代へ。 昭和5年、静岡は浜松。
主人公を含む三姉妹が出てくるのですが、まずこの子たちが愛くるしい。 おかっぱ頭だとか、外見が昭和初期、というだけでなく、この子たちの顔がね、昭和顔なんですよ。
そして例によって(笑)主人公は高いところに登り(笑)、降りらんなくなって父親の西島秀俊サンがスッ飛んできて周囲に平謝り、と朝ドラ恒例の展開が続きます。
ただしこの家族、互いに丁寧語で話すことが不文律となっており、昭和初期にもかかわらず、父親(とと)の当たりはソフトで威張り散らすことなど論外。 母親(かか)の木村多江サンもおっとり型の典型で、「食事中に帽子をかぶっちゃダメですよ」、と躾はするけど言い方が全くキツくない。 三姉妹は三姉妹で、家の手伝いを嬉々としてやっているように見える。
これが実に、「おままごと」 をやっているように見えるのですよ。 いや、悪い意味ではなく。 「おままごと感覚」。
なんというか、そこには 「人間の業」 が渦巻いてない(笑)。 「私が私が」 というのもないし、「私のだ私のだ」 というのもない。 予定調和のなかに子供たちの本来持っている我欲みたいなものがスーッと消えていってしまうような感覚。
この家庭には、穢れがない。
しかし、番組予告によるとこの父親は近く死んでしまうらしく、それで主人公はととの代わりをしなければならなくなり、とと姉ちゃんと呼ばれるようになるのだとか。 この穢れなき世界が、どのように変容していくのか、期待しながら見ようと思います。
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「とと姉ちゃん」 第1回 穢れのない世界
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