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Channel: 橋本リウ詩集
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「真田丸」 第3回 「飽きさせない」 ための技術

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 すでに去年の 「花燃ゆ」 が記憶の彼方に行きつつある昨今ですが(笑)、今年の 「真田丸」 を第3回まで見ていて、「ドラマを飽きさせないことって、こういうことなんだな」 と思い知ることが多いです。 「花燃ゆ」 なんか、見ている途中で何十回寝たことか。

 つまり、「どーでもいいことを延々とやられる」 と、寝てしまうんですよね。 「この人はこれだけみんなに尽くしました、これだけのことをやりました」 ということって、人ひとりの人生にとっては意義のあることなんだけど、それをドラマで見せようとすると、見ている側は 「あーはいはい、そうねそうねそうね、はいはい立派立派、はいはい分かりました」 みたいな、どこかの漫才師みたいなことになってしまう。

 「真田丸」 第3回では、まず信繁(堺雅人サン)を取り巻くふたりの女性、長澤まさみサンと黒木華サンでドラマとしての起伏をつけ、小山田一族と共に死んだはずの小山田茂誠(高木渉サン)を落ち武者として登場させることで、信繁の姉であり茂誠の妻である木村佳乃サンもきちんとドラマに絡ませていく。
 政治的状況においては信州の国衆(まあ、豪族みたいなもんでしょうか)に寺島進サン、西村雅彦サンらの手練れを配置して昌幸(草刈正雄サン)のパワーゲームを見せる。
 信繁の兄、信幸(大泉洋サン)の 「マジメさ」 というものを第2回で見せておいて、その 「マジメさ」 故に、昌幸のパワーゲームの中で翻弄され傷ついていく信幸の姿を第3回で活写する。
 そのなかでは家康(内野聖陽サン)の 「信長様はキレイ好き、とっ」(小林克也サンの歌…知らんだろうなァ)でおおいに気を使う場面や、信繁の母親(高畑淳子サン)とおばば様(草笛光子サン)のやり取りを挿入することも忘れない。
 信繁は信繁で、国衆の民どうしの 「薪取り合戦」 において 「下から攻撃したら上から丸見えだから、上に回って攻撃」 などの 「戦上手」 なところを、これまたさらっと見せてくれるし。

 要するに、内容がこの45分だけで、てんこ盛りなんですよ。 眠たくなるヒマがない。

 この、登場人物すべてに気配りがなされている点は、三谷脚本のすごいところだと、素直に感じます。
 気配り、と言って、大したことじゃないんですよ。
 ほんの5分でも、いや、2、3分でもその人を画面に登場させ、その人たちの考えそうなこと、言いそうなことをあらかじめ調べてから性格設定し、肉付けしていく。 そうしたうえでその人物たちにしゃべらせれば、もうほんの数分でも立派に印象的な場面が作っていける。
 こういう簡単な、脚本家として初歩的なことが、なんで去年の大河にできなかったのかな~。 だからダブル脚本とか、トリプル脚本とか、ダメなんだよ。

 で、第3回の白眉は、先にも書いた昌幸が繰り広げるパワーゲームなのですが、それはほかのドラマブログに任せるといたしまして(笑)。

 ただそのパワーゲームに翻弄された、信幸についてはちょっと。
 結局 「お前はマジメすぎて演技が出来ないから黙ってた」 と父から言われ、傷つきながらも、そこにいろんなフォローが入っていくのは見事。 寺島サンが堺サンに 「兄貴は今しんどいだろうから話を聞いてやれ」 と声をかける、という流れは、もう去年の脚本家たちには書けなかったでしょうね(ズタボロだ)。
 そこに絡んでくるのが、先にも書いた小山田茂誠であり。 こういう用意周到なところがドラマ好きにはたまらないんですな。
 信幸は自分のプライドがズタズタにされていた矢先だから、「知ってしまった以上は 『腹を召されよ』 と言うしかない、それが嫌ならわしがここで斬る」 と、自分のマジメさを押し通す反応しかできないんですよ。
 この反応の展開の仕方が、実にドラマ的である、と言える。

 結局信幸は 「この人を斬るなら、姉も一緒に斬りなさい」 とかばった木村佳乃サンの姿に自分の持ち場のない怒りを鞘に収め、茂誠が逃げるための猶予を与える。 第3回序盤で茂誠を失って食事ものどを通らないさびしい木村佳乃サンの姿をさりげなく描いていたからこそ、この展開が説得力あるものに仕上がるのです。

 しかし第3回で私がもっとも萌えたのは(笑)、信繁に片思いを募らせる長澤まさみチャンでしたねー(笑)。
 彼女は 「このドラマ、現代語がおーすぎ」 という巷の 「真田丸」 批判にいちばん深く刺激を与えるような役で(笑)。
 でも、いーんだなー、こういうツンデレ系のオキャン系(笑)。
 信繁がまさみチャンの恋心などちーとも気付いていないのはまあお約束といたしまして(笑)、「華チャンに櫛を買ってきた」「ああ、そー言やオマエのもあるよ」 で、じっさいの櫛は華チャン用が木箱にうやうやしく入っていて漆塗りの上等なヤツで、まさみ用が粗末などーでもいい櫛(笑)。 そこに華チャンの兄の藤本隆宏サンが入ってきてさらに会話に入っていけなくなり、そこに薪取り合戦の展開。 そこにのこのこついていって、「足挫いちゃったかな~」 とか。

 もうこういうコ、オジサンは萌えるんだよな(笑)。 たぶん三谷サンの趣味でもあろう(笑)。

 かくして 「飽きさせない技術」 をまざまざと見せつけてくれる今年の大河、次回は織田に乗り込むぞ~。


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