Quantcast
Channel: 橋本リウ詩集
Viewing all articles
Browse latest Browse all 224

「探偵の探偵」 いろいろと、よく分かんなかったです

$
0
0

 自分の妹がストーカーに殺される原因を作った探偵 「死神」 を探し出すために、「探偵の探偵」 というよく分かんない(笑)仕事についた北川景子サン主演のドラマ。 見ているあいだずっと、この 「よく分かんない」 という気分に支配されたまま、ドラマはたった11回のあいだにあれよあれよと急展開を繰り返し続け(笑)、最終回を見終わっても、「なんだったんだろーね?」 みたいな不思議な気持ちに囚われています。
 こういう 「読後感」 のドラマって、あまり見たことない気がする。

 ストーリーがあまりにめまぐるしいのは、クレジットに出てくる原作本が3冊に渡っていることを見れば明白です。 つまり小説3冊分の話を11回で見せようってんだから大急ぎになるのは当たり前。 本来であれば、「シーズン○○」 とかもっと回数をかけてやるべき話のはずです。
 ただ、もしこういうのを映画でやれば2時間程度で収めなければならないから、もっとめまぐるしくなるはず。
 だから映画なんかの場合には、ストーリーを削ぎ落とし、同時にメインテーマを膨らませて全体のバランスとクライマックスへの流れを作っていくわけですが、これが11回くらいのテレビドラマとなると、ストーリーの削ぎ落としもそれほど行なわなくてよくなる。
 しかしその作業が、ことこの 「探偵の探偵」 という小説に関しては、バランスのつけ方がそれで却って難しくなった、そんな印象を抱きました。

 作品の質とそれに見合った尺の作り方、という、いわば制作側の大局に立った視点での迷い。 それがこのドラマの 「う~ん、何なんだろーね?」 みたいな読後感につながっているのではないか。
 分かりやすく言うと、「シーズン○○」 まで続けていく気概というものが制作側に欠けている。 「視聴率が悪かったら続編も何もないよね?」 みたいな弱気が見て取れる気がするんですよ。

 これって今のフジテレビ、というテレビ局自身の迷いなのかもしれない。 この同じ夏クールで放送された 「HEAT」 にしてもそうなのですが、どうもフジテレビはこの 「HEAT」 を映画化までしようとしているらしいけれど、ご承知の通りこのテレビドラマは視聴率的に史上まれに見る惨敗だったらしく(私も開始10分でリタイア…笑)、そんな 「誰ーも見ていないドラマを映画化して、客がはいんのかよ?」 みたいなことに、まあたぶんなっちゃってるんでしょうな。

 最近のフジテレビのドラマを見ていると、どうもそういう、「思い切りの悪さ」 をよく感じるんですよ。 ほんの数年前までは、そういうことなかったんだけど。 「ゴーイング マイ ホーム」 とか、「最高の離婚」「リーガルハイ」 とか、それまでのテレビドラマとは違うエンターテイメントを作ろう、もし視聴率が悪くても分かる人には支持される、という 「気概」 があった気がするんですね。
 それが、今年のフジテレビのドラマの中でいちばん冒険していたのは 「デート~恋とはどんなものかしら」 だと思うのだけれど、それでもおっかなびっくりやってるような印象をどこかで受ける。 「問題のあるレストラン」 も、もっとやりようがあったのでは?と思わせる部分があった。 これって社長交代となにか因果関係があるように思える。 没落気味のテレビ局というのはこういうものなのかな、とふと思ったりもする。

 まあ、こういうフジテレビ自身の問題が心に引っかかったままこの 「探偵の探偵」 も見たせいなのかもしれないけれど、数年前に見た同系統(でもないか)の同局のドラマ 「ギルティ 悪魔と契約した女」 の緊張感と比べて、なんかこう見劣りする。 それって、どこが違うのかな、と。

(注意・ここからネタバレ入ります)

 まず、展開が読めてしまうのが致命的。

 物語途中で門脇麦チャンがDV夫の被害者みたいな形で出てくるのだけれど、目つきが悪すぎて(笑)。 ここ、役者が門脇麦チャン、という時点でもう怪しいの極致なんだなー(笑)。 こういう、「演技出来る役者」 をチョイ役で出してはいけない(「まれ」 ではチョイ役?…笑)。

 これはキャスティングの時点で間違っとるわけですよ。 意外なヤツが死神だった、という驚きを視聴者にぶつけるためには、犯人は例えば満島ひかりチャンでもまずい。 年齢層は違うけれども、例えば大竹しのぶサンなんかが事件モノでなんだか影の薄い役で出てきたら、それだけでもう怪しいの極致でしょ(笑)。 演技が出来る役者を真犯人に据えちゃまずいんですよ。
 キャスティングを考えるスタッフにもっとやる気があったら、門脇麦チャンなんか絶対に使わないはずです。 彼女の狂気の犯罪者の演技を見せたくてしょうがない、という制作側の考えの浅い空気が如実に見る側に伝わってしまう。

 そして見るからに怪しくなさそうなのが、序盤に出てきたユースケ・サンタマリアサン(笑)。 結局何だったんでしょうかね、このユースケサンが演じた阿比留っていう探偵事務所の社長は(笑)。 最初っから見るからに 「僕、引っ掛けで~す」 みたいなの(笑)。 こういう、分かりやすすぎな演出も制作側のやる気のなさを感じてしまう。

 そして、「中途半端な物語の圧縮」 が産んだ悲劇が、物語中盤であっけなく殉職してしまう、百恵チャンの息子(申し訳ない、こういう書き方して)。
 えーと、三浦貴大クンですか、この窪塚刑事。 彼はいろいろと大変な境遇だったのですが(全部割愛…笑)、北川景子サンと最初は反目しあってたけど、信頼できるパートナーになりそうだった矢先に、門脇麦チャンをDVしていたヤツにあっさり殺されちゃうんですよ。
 これ、話をユースケ・サンタマリアサンに序盤あんなに割いてなければ、もっと悲劇色が強まったと思うのですが、どうにも物語のスピードのなかに埋没してしまった印象で。

 このドラマ、第1回こそ先の読めない展開で面白かったのですが、ユースケサン演じる阿比留の野望に話が移行してからはちょっと 「最初のボスキャラにどんだけ時間かけてんの」 みたいな感じになって(笑)。 結局阿比留は自分の野望に呑みこまれてしまって、物語の後半に刑務所の接見室で 「ここは退屈だぁ~」 と北川サンにボヤいて退出しただけ(でもないか)。

 物語の感動バランス曲線(笑)を考えた場合、やはり窪塚刑事にはもっと時間を割くべきだった、と感じますね。 だからその殉職が、とてもあっけなく感じてしまう。

 そして 「このドラマ、結局、何だったんだろーね?」 の最大の原因は、「対探偵課」 という物語のいちばん根幹の部分の必然性が、なかなか伝わってこなかったこと。

 まあ、この 「対探偵課」 を立ち上げた北川景子サンが所属する探偵社 「スマ・リサーチ」 の須磨社長(井浦新サン)によって 「悪徳探偵を排除することで業界全体の信頼の向上を目指す」 みたいなこと(あといろいろあるけど省略)が明かされるのだけれど、んー、それってすごく遠い間接的には利益につながるんだろうけど、よくそんな余裕あるよね?みたいな(笑)。

 要するに、北川サンがやってることが真実味を帯びてこないんですよ、いくら見てても。

 これ、小説を読んだらもっと納得できるのかもしれないけれど、難しいですよね。

 理屈じゃ分かるけど、それってまるで、空気みたいじゃない?、みたいな。

 まるで今回の安保法案みたいですよ(いや、理屈でも分からんか)。

 実際に現場で傷だらけになってるのは、自衛隊員だ!じゃなくて、北川サンなんですからね。

 彼女、あれだけ毎回ボコボコにヤラレといて、よくあれほどの美貌を保っていられるな、というのもちょっと(笑)。 顔がアザだらけで漬物石みたいだったら分かるけど(笑)。

 物語途中でこの、「対探偵課」 自体が探偵業界で問題になって、業界会議で須磨社長はつるし上げられるんですが、逆に須磨社長は 「皆さんのところでも対探偵課を作ればいい」 と提案、…それがいとも簡単に受け入れられてしまうのもなんとも…。

 確かに制作者の浅知恵通り、門脇麦チャンの狂気の犯人の演技はエンタメとして成立していましたが、彼女がどうしてここまで狂いまくりなのかも、あまり理解できなかった。
 最終回、麦チャンは北川サンをはじめ、北川サンになついていた(犬かよ)峰森琴葉(川口春奈チャン)と彩音(中村ゆりサン)姉妹をいたぶり続けるのだけれど、「ここまでやったらどーやってもアシはつくだろう、ぜんぶ証拠隠滅させるためには、ここにいる全員殺さなきゃダメだろ」 というくらいの暴走ぶりで。

 しかし最後の最後で、麦チャンは最後のとどめをためらう北川サンに向かって 「それでも紗崎玲奈かよ!」 みたいなことを言ったと思うのですが(あ~録画、消しちゃったよ…)、「ああ麦チャンは、自分の狂気を理解してくれるのが紗崎玲奈だけだ、と直感したんだろうな、そして自分の狂気を終わらせてくれるのも紗崎玲奈だけだ、と考えたんだろうな、つまり彼女はすべてを終わらせたくなったんだろうな」 みたいなことは感じました。

 しかしですね、そうした麦チャンの狂気の裏に潜んだ悲しみまで感じさせてくれるには、それまでの物語があまりに大雑把過ぎた、という気はするんですよ。

 もっとやりかたはあるのにな、ということをその都度思わせてしまう、というのは、これは制作側の迷いが見る側に伝わってしまうから、なのではないでしょうか。

 ただまあ、毎回感じていたのは、北川サンの役名、「紗崎玲奈」。

 「どーして、佐々木じゃダメなのかな?」「カッコつけた名前にしてんじゃねーよ」、 …と申しましょうか…(ハハ、ハハ…)。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 224

Trending Articles