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Channel: 橋本リウ詩集
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「真田丸」 第2回 大マジメな 「はぐらかし」 の妙

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 三谷作品に漂う 「可笑しさ」 の質、それはアメリカンコメディの影響を受けたドタバタ…という分析はいいとして(笑)、奥さんと別れてからはなんか、どこか 「すべる」 ことに快感を感じているのではないか…という分析もいいとして(笑)。

 それを 「ぼくちゃんたち面白いでしょ? ね? ね?」 みたいなノリでやられることに、ちょっと引いてしまう人も若干おられるのではないでしょうか。
 今作 「真田丸」 においては特に今のところ主人公信繁(堺雅人サン)がその役割を担っているような感じ。 堺サンを見てると 「『リーガルハイ』古美門の幸村バージョンか」 、と、まあそこまでひどくないけど(笑)、幸村も若い設定だから仕方ないとして。

 それに対して信繁の兄信之を演じる大泉洋サンは、これまでにない真面目な役に取り組んでいる気がする。
 つまり、信之というのはオチャラケていては務まらない人物なんですよ。 将来家康の信頼を得るためにオチャラケていられない、という意味で。
 だから大泉サンは 「信之どうでしょう?」 みたいなことができない。 大泉サンにとっては新境地とも言えるのですが、少し演じにくそうなところも見えなくはない。 ミスキャスト?

 大泉サンに限らず、このドラマにはミスキャストが多数存在するのではないか、と私は考えておるのですが、こと大泉サンに限っては、三谷サンはそのミスキャストを(三谷サンが役を決めてんのかな?)(いや、決めとるのはNHKだろう)逆手にとって、大泉サンに 「大マジメに演じることからくる可笑しさ」 みたいなものを託している気がする。

 それは第2回で、「北条につくか上杉につくか」、という大事なことをくじ引きで決めようとする、父昌幸とのやり取りの中で垣間見えるのですが、「マジメゆえの笑い」 を逆に突き詰めていたのは、父昌幸役の草刈サンだった(笑)。
 そもそも 「くじ引き」 というこの部分の設定自体が三谷作品らしい。 「そんな大事なことをくじ引きで決めるなんて!」 という 「マジメ」 信之に対して 「それってウケルwww」 という 「オチャラケ」 信繁の対比をここで鮮明に出すと同時に、言い出しっぺの父昌幸の 「考えてなさそーで考えている」 したたかさと飄々とした部分を同時に見せる。
 そしてそれを実に大マジメに演じ、結局 「いや、こんなことをくじ引きとゆーのはさすがにヤバい」 と、さんざん敷きまくった風呂敷を勝手に畳んで(笑)「真田は織田につく!」 と宣言する。

 第2回における、三谷作品の長所がここにあった気がしましたね。
 「大マジメなはぐらかし」。 しかもそこに真田父子の特徴を織り交ぜる。

 しかし 「可笑しさ」 に的を絞るのは、あまり適当ではありません。 この第2回のメインは、やはり武田滅亡。 第1回に引き続いて勝頼役の平岳大サンは傑出していました。 特に自害の場面では、目の前に現れたる父信玄の霊の前に、この世の無常と、悔しさと情けなさをにじませる。 ライティングの良さもあったのかもしれないけれど、ちょっとお父上を彷彿とさせました。

 その武田の滅亡の報せが昌幸のもとに届くのですが、このドラマ、直前に昌幸の手の中で割れたくるみと、信玄の亡霊という前フリによって、報告役の佐助と昌幸のあいだに、肝心の内容がまったく省かれたやり取りが交わされるのです。
 のちに昌幸から息子たちにも同様に、無言のうちに武田の滅亡が知らされることとなる。
 こうした 「純日本的な」 演出の方法というのは、今の合理化された演出に慣らされている若い世代には、どう映るのでしょうか。 「報告になってないじゃんwww」「なんにも言ってないのによく分かるな」 といったところなのかな。 日本的な機微を、学んでくださいまし。

 そして 「裏切り者はキライだ」 と言いながら武田の筆頭家臣であった穴山を手厚く迎える、家康。 武田家の居城の焼け跡で、武田家滅亡の原因に思いを馳せながら、「自分は生き残るのに精一杯っス」 と、戦国の世でまだまだ受け身いっぽうの弱々しさを自嘲するのです。
 この内野サン演じる家康が、そのうちに強大な影響力を携えていくのですが、そこでこの弱々しさが、どう変化していくのか、そしてそこに、「マジメすぎて可笑しい」 信之が、どう絡んでいくのか。 三谷サンの手ぐすねが、そこに見える気がする(笑)。

 手厚く迎えられた穴山とは対照的だった小山田など、戦国時代の厳しさをきちんと見せながら、第2回も全体的に話がきちんと締まっていたように感じた、「真田丸」 です。


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